都市の音楽史「ウィーン」ではハプスブルク近代史がご専門の大津留厚先生と、音楽文化史・音楽美学がご専門の大田美佐子先生のお二人に、それぞれのご専門の視点からウィーンの社会、文化、音楽についてお話しいただいております。最終回となる第3回は世界大戦という大きな歴史の事件が起こってしまった時代を取り上げます。
§第3回 <19世紀末~20世紀 世紀末に生きた音楽家の葛藤とゴドフスキーの作品>
世界大戦という大きな歴史の事件が起こってしまったこの時期、社会に生きる一員としての音楽家もその影響を避けることはできませんでした。
そうした激動の社会背景にあって、旧い時代様式を守り続ける人々、新たな実験を通じて自分は何をすべきかともがく人々など皆がそれぞれの思いを抱えながら生み出された音楽があります。
左手のためのピアノ作品も多く生まれたこの時代、当然社会全体や音楽会での様々な要素とも深いつながりがあります。
お話の最後はそのようなことにも思いを馳せながらミニコンサートをお聴きいただきたいと思います。
~ サウンド・オブ・ミュージックはなぜオーストリアで上映されないのか? ―1941年のベーゼンドルファー― ~
日本では誰でも知っているオーストリアを舞台にした映画サウンド・オブ・ミュージックは、そのオーストリアでは見ることができません。その理由を探りに、牧落倶楽部にあるベーゼンドルファーが作製された1941年という年のオーストリアにタイムスリップ![大津留厚先生]
~ ウィーン -ベルリン物語 – シェーンベルクとヴァイルの交差点 ~
世紀末のウィーンに生まれ、20世紀の音楽をモダンな方向に牽引したシェーンベルク(1874-1951)。マーラーやシェーンベルクの街、ウィーンに憧れながら、やがて1920年代のベルリンで三文オペラを大ヒットさせて、亡命先のアメリカで社会派ミュージカルの道を切り拓いたクルト・ヴァイル(1900-1950)。
シェーンベルクとヴァイルが通った、ウィーン、ベルリン、アメリカの点と線を結び、この二人の意外な接点を明らかにして、世紀末から20世紀前半の音楽界の革新について語ります。[大田美佐子先生]
【日時】2023年11月19日(日) 14:00 ~
【会場】牧落倶楽部サロン
【料金】4,500円
【講師】大津留 厚・大田美佐子
【演奏】有馬圭亮(左手のピアノ)
ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。
【お願い】
・サロンへは高校生以上の方にご入場いただけます。
・ご予約確定後のキャンセルはご遠慮下さい。
・感染症拡大の状況によりマスクの着用をお願いする場合がございます。
【プロフィール】
講師:大津留 厚(おおつる あつし)
取得退学。
大阪教育大学助教授、神戸大学教授を経て、現在、神戸大学名誉教授。
国際学修士。
専門はハプスブルク近代史。
講師:大田 美佐子 (おおた みさこ)
東京藝術大学音楽学部楽理科で音楽学を、学習院大学大学院人文科学研究科でドイツ演劇を学ぶ。 ウィーン大学大学院人文学研究科博士課程修了(音楽学)。ハーバード大学音楽学部客員研究員など。現在、神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授。専門は音楽文化史・音楽美学。
訳書にフランツ・エンドラー著 『ウィーンっ子によるウィーン音楽案内』(音楽之友社, 2002)など。2022年には多様な音楽劇の作曲家としてクロスオーバーに活躍した作曲家の評伝『クルト・ヴァイルの世界 ー 実験的オペラからミュージカルへ』(岩波書店)を上梓。
演奏:有馬 圭亮 (ありま けいすけ)
左手のピアニスト。1989年生まれ。2010年、大阪教育大学在学中に局所性のジストニアを発症し、左手のピアノ曲の演奏を始める。2012年より左手演奏の普及、復興を目的とする「左手のアーカイブ」プロジェクトにて、片手演奏のための教材制作や音楽教室「ワンハンド・ピアノレッスン」での演奏指導、学習者のためのワークショップを行う。2020年東久邇宮記念賞を受賞。現在は民族音楽を中心に地域の文化の研究、作曲にも取り組んでいる。