9/4、ハプスブルク講座シリーズの第4回目が開催されました。前回までの三回はハプスブルク帝国の本拠地ヨーロッパでのお話が中心でしたが、今回はなんと我らが日本が舞台とのことで、遠い遠いヨーロッパのお話…と思っていたハプスブルクが、ぐっと身近に感じられる回となりました。

第一次大戦時下、イギリスと同盟関係にあった日本にはドイツ兵の捕虜が送られてきたそうで、その中にはハプスブルク帝国の捕虜も含まれていたそうです。その捕虜たちは兵庫県の青野原収容所に最終的に収容されたそうなのですが、そこでの生活の様子などについてのお話がありました。豚を飼ったり(⁉︎)、サッカーをしたり、そして青野原楽団を結成して演奏会を開いたり…。思慮浅い私は「捕虜生活、意外と楽しそう♪」などと能天気に思ってしまったのですが、大津留先生の「それは人間として生きるための必死の行動だったのでは」とのお言葉に、目を覚まさせられる思いでした。自分たちのアイデンティティを見失わず、生き延びるために必死に努力していた捕虜たち。いつ帰れるともしれない故郷を偲び、先の見えない不安な日々を過ごしていた彼らの気持ちは推し量るべくもないものですね。

先生のご講義の後は恒例のミニ演奏会♪今回はヴァイオリニストの横山亜美さん、ピアニストの武田直子さんという豪華で素敵な演奏家お二人による、牧落倶楽部初の弦楽器の入った演奏会となりました。曲目は当時の青野原楽団の演奏会での曲(「ソルヴェイグの歌」)や、クライスラー など第一次大戦下の作曲家のものをセレクトしてくださいました。捕虜生活を「楽しそう」などと短絡的でお気楽に捉えていた私でも、美しいヴァイオリンとピアノの音色で雄弁に語りかけられると、捕虜たちの望郷の念やその悲しみが実感を伴ってひしひしと感じられ、胸に迫るものがありました。これも横山さんと武田さんの豊かな表現力と説得力のある演奏のおかげです。まさに琴線に触れる素晴らしい演奏でした。

弦楽器が入ったコンサートは牧落倶楽部で初めて、と先に書きましたが、当サロン、ピアノの響きがいいのはよくよくわかっていたのですが、弦楽器の音ともとても相性が良く、その美しい響きに満たされたサロンで、うっとりと音楽に聴き入らせていただきました。青野原の捕虜の方々も当時の音楽会でこのような音楽に癒される幸せな時間をほんの束の間でも過ごせたのであればいいなぁ…と心から願います。

次回はいよいよ最終回!ヴィトゲンシュタインという左手のピアニストが取り上げられます。そしてその演奏に有馬圭亮さんが再び登場されます♪皆さまも是非ご一緒に音楽と共に学びを深めてみませんか。

第4回ハプスブルク講座「青野原―箱庭のハプスブルク」より