音楽の背景を知る講座であるハプスブルク講座全5回シリーズ。今回はその第2回目、3回目の模様をお伝えしたいと思います。この2回は主にハプスブルク時代における言語、学校設置についての講義でした。

 ハプスブルク帝国のその広い領土には実に多くの民族が暮らしていましたが、ハプスブルクはその統治にあたって、全ての民族の平等を高らかに謳い、それぞれの自治権を認めていたそうです。そして子どもたちが自分の母国語を使う学校に通えるように、学校設置はとても細かく考慮されていたそうです。ハプスブルクと言えば絶大な権力を誇ったヨーロッパの中心的存在で、その力でどのようにでも統べることができたと思われますが、それぞれの民族の権利を認め、守り続けたことには感銘を受けました。どの大国にもこのような寛容さがあれば、もしかしたら今日のような戦争も起こらなかったのでは…と少し考えさせられました。

 後半のミニコンサートには、ピアニストに姫野真紀さんが迎えられました。いずれの回も東欧、まさにハプスブルク領土出身の作曲家が取り上げられました。まずはドボルザークとメンデルスゾーン、言わずと知れた有名どころ。ヤナーチェク、まだわかります。シュルホフ、レオ・ヴァイネル……誰???という普通のコンサートではなかなかお目にかかれないマニアックな(⁉︎)プログラムでした。どの曲も素朴で鄙びていて、それでいて激しさもありとても惹きつけられました。東欧の風土や民族性などが滲み出た魅力的な曲想、しかも日本人の私にもどこか懐かしい感じがするのがとても興味深かったです。確かハンガリー人の氏名は日本と同じく、姓→名の順番だったと思います。レオ・ヴァイネルさんもヴァイネル・レオと表記されているものもあり、親しみを覚えました。

 姫野さんはとても音楽に造詣が深く、しかも独自のアプローチをお持ちで、その演奏やお話から音楽への尽きない興味がひしひしと伝わってきます。そして何より音楽を愛しんでいらっしゃる感じがとても素敵なのです。それと姫野さんがピアノを弾き、お話をされると穏やかな心地よい空気が流れるのを感じました。まるで居心地のいい姫野さんのお部屋にいるような(お邪魔したことはありませんが笑)、いつまでもここにこうして浸っていたい…という気分になりました。穏やかで常に自然体、でもお話はとってもユニークで面白い。そんな素敵な大人の女性から醸し出される雰囲気がサロンに豊かに漂い、癒しの空間になっていたのですね。

 ハプスブルク時代の多様性を認める自由な空気、その時代や民族性が感じられる音楽。分野は違えども大津留先生と姫野さんの尽きない探究心。そしてご来場の方々やオンラインでご聴講の方々の真摯な向学心。それらが絶妙に混ざり合い、いつまでも心に残る素晴らしい時間となりました。みなさま、本当にありがとうございました!

~第2回、3回ハプスブルク講座より~